◇渋谷真コラム・龍の背に乗って
◇29日 中日3―0ヤクルト(バンテリンドームナゴヤ)

涌井が挙げた65日ぶりの白星は、唯一無二の「ライバル」にも届いたはずだ。7イニング無失点で89球。現役最多(60)を誇る完投も期待できる内容だった。

 同じ1986年生まれのダルビッシュ(パドレス)は、友人か、ライバルか、どちらでもないか。僕の問いにしばらく考えてから、涌井はこう答えた。

 「ライバルじゃないですかね。唯一の。最初に(ダルビッシュの)存在を知ったのは中学生の時なんですよ」

 中学野球界では東の涌井、西のダルビッシュと呼ばれる有名人だった。某高校野球雑誌に特集記事で取り上げられたのが、いわば出会いだった。名門校で甲子園に出て名を挙げ、高卒ドラ1。同じパ・リーグでしのぎを削った。

 「それでも僕は対戦するまで何とも思ってなかったんですが、あっちはユーチューブとか見る限りは意識してくれていたみたいですね」

 今春、侍ジャパンの一員としてバンテリンドームにやってきたダルビッシュと、久々に再会した。後輩を引き合わせ、記念撮影もした。大リーグ通算100勝を挙げた記念に、サイン入りのドラゴンズユニホームを贈り、ダルビッシュはSNSで喜びを伝えてきた。この2人が独特なのは、投球に関する意見交換から他愛もない日常の話題まで、SNSで公開するところだ。そして、WBCでは「ダルビッシュ塾」と呼ばれ、中日でも涌井に教えを請う投手は何人もいる。自分がつかんだ技術をオープンにするところも似ている。

 「僕は昔からそうでしたけど、向こうは変わりましたよ。昔を知っている人は、みんなビックリしてますもん」

 たったひとりの「ライバル」ではあるが、闘志をむき出しにするわけでなく、似ているとも認めない。通算158勝を飾ったこの日、196勝(日米合算)のダルビッシュは右肘炎症により負傷者リスト(IL)入りが発表された。

 「焦らずしっかりケアをして、来年またさらにパワーアップした君の姿を誰もが期待しています。君の活躍が何よりも刺激になっています」

 涌井から一時離脱するライバルへのメッセージ。ともに37歳。どれだけ勝つかも大切だが、いつまで先発として投げられるかも興味深い。




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(出典:中日スポーツ)